超高齢化が進むなか、認知症になっても本人の尊厳が守られ、住み慣れた街でいままで通り安心して暮らしていける社会づくりを進める活動。 朝日新聞社はグループ全体で「認知症フレンドリープロジェクト」を展開されています。
朝日新聞東京本社 坂田一裕氏の講義より
朝日新聞社様では、認知症の人の行動を表す際に「徘徊」(目的もなくうろうろ歩き回る、の意)という言葉を原則として使わないことを宣言されています。
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その理由として
徘徊という言葉は、本人の視点からの言葉ではないから。
認知症の人自身から行方不明になりかけたときの状況を聞いた際、本当は行きたい場所や目的があったのに迷ってしまったというのが実態。そのため、徘徊という表現については、本人から「やめてほしい」という声があったとのことです。
認知症の人を「困った存在」とみなす視点が含まれていると感じられたそうです。
認知症を理解しよう!
現在、日本には500万人を超える認知症の人がいるといわれています。
それほど身近なものであるにもかかわらず、認知症に対して誤解や偏見が多いのが現状です。そういったことをなくすためには、認知症について正確に知る事が大切です。本人の視点を理解するための一つの要素として、正しい知識を学びましょう!ということで、まずは認知症の理解から講義が始まりました。
認知症⇒脳の認知機能が持続的に低下して生活に支障が出ている状態
●主な原因疾患
・アルツハイマー病
・レビー小体病
・脳血管障害
●「認知症=自立できない」は誤解
食事やトイレを自分でできない重度の人は一部。
多くは支援があれば自立可能な軽度や中等度。環境が整えば自立した生活を送ることが十分可能ということです。
●高齢者の5人に1人が認知症の時代に
認知症の人は特別ではなく「当たり前の存在」の時代がくる
★認知症の人に対処するという考え方では追いつかず、環境面を変えることで自立した生活を送れるようにするという視点が必要とのことです。(朝田医師からのワンポイント)
●症状には「中核症状」と「周辺症状」がある
中核症状:脳の神経細胞が壊され、認知機能が低下することで起こる症状
(アルツハイマー型認知症であれば)
・記憶力が低下
・時間や場所、人の順に認識できなくなる
・段取りよく行動できなくなる
・場に応じた判断ができない
周辺症状:中核症状に付随して起こる二次的な症状。本人の性格、生活環境、周囲の人との関係などがからみ合って下記のような症状が出現する。
①睡眠障害
②怒りっぽくなる
③ひとりでの外出を繰り返す
④意欲の低下・妄想
★家族や周囲の人を困らせるのは、主に周辺症状です。しかし、周辺症状こそ、周囲のサポートによって改善できるのです。周囲の人がどう対応するのかによって、本人の症状の出方も変わってきますとのことです(朝田医師からのワンポイント)
●軽度認知障害(MCI)の特徴と認知症の予防
MCIの代表的な傾向
・連続ドラマを見なくなる
・長年続けた趣味をやめる
・小銭での支払いが難しくなる
有効性が認められている認知症の予防法
・運動習慣を持つ:(有酸素運動や筋肉トレーニングなどを、継続することが大切)
・自分の生きがいを追及する:(友人と集まって楽しくおしゃべりをしたり、趣味を継続し たりするなど、自分の生きがいを追及することが認知機能の向上につながる)
認知症フレンドリーの考え方
※「見守ること」だけではない:一人でも安心して外出できる環境をつくる!
従来の視点⇒事故が起こらないように保護する仕組みを考える
認知症フレンドリーの視点⇒認知症の人が安心して移動できる仕組みを考える
※「認知症だから」というフレームをはずそう
「認知症の人」としてではなく、「地域住民のひとり」として接する!
ポイントとして
① 「近くに認知症の人がいるかもしれない」と意識してみる
② 「徘徊している」と見るのではなく、「どこに行きたいのか」に目を向ける
③ 認知症の人とコミュニケーションをとり、困っていることを聞きフィードバックする
※認知症フレンドリーは、これからの地域の課題
認知症の人にとっての暮らしやすさを地域の強みに変えていく
地域における認知症フレンドリー化のステージ
1:認知症への理解を若い世代から深めるための機会をつくる
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2:講習会やイベントなどで実際に認知症の人と触れ合う機会をつくる
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3:認知症があったとしても、誰もが地域で活躍できる場をつくる
講座プログラムには、一方的な視聴だけではなく「体験型」も取り入れられていて、今回VR体験をしました!
(臨場感たっぷりに認知症の人の視点を体験しました)
1⃣ 階段を降りる:空間を把握する認識能力などが低下し、段差が降りづらい感覚を視認できます。認知機能の低下した人が階段などの段差で躊躇する理由が理解できます
2⃣ 幻視が見える:主にレビー小体型認知症に現れるとされる幻視を再現されていて、比較的に多いとされている子どもの幻が見える状況を体験しました
3⃣ 自動車の運転:認知機能が低下している人の運転状況を再現されていて、距離感がつかみづらくなる交差点など運転操作にとまどい車に衝突しそうになりました。又、高齢者てんかんによって一瞬意識を失う状況も体感しました
認知症への理解を深めることで、認知症の方ご本人はもちろん、支える方たちにも生きやすい社会になることの大切を痛感しまし。
VR体験を通して、私が見ている風景がどんな風に見えているのか、本人の不安や恐怖を考えさせられる貴重な体験だったと思います
認知症を「自分事」として考えるきっかけになりました
認知症介助士 かすみ草みち
GemMindのホームページ:gemmind.jp